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2012-06

熱交換器の設計指導現場で感じること

私は、エネルギー工学という工学分野は、資源とエネルギーの利用技術を開発する分野だと思っている。もちろん、基本は熱工学である。このエネルギー利用に初めて携わったのは、もう35年程前になる。当時は現在と違う意味でのエネルギー危機で、田中角栄首相が大インフレを日本にもたらしたのちのことである。入社間もなく、私は原子力製鉄の研究チームに加わった。当時の日本は鉄鋼基地といわれ、新日鉄や、日本鋼管などの製鉄会社が日本経済を引っ張っていた。私はこのプロジェクトで1000℃という高温のヘリウムループの熱利用システムの設計をした。この経験とプラントを建設し、試運転を通して得られたデータと理論値の摺合せなどが、基本になっている。現在は、熱利用機器の設計においてもIS単位が常識で、大学でもISで授業を進める。しかし、現実は、このような熱交換器などのプラント機器の設計では、ユーザが従来の工学単位で仕様を提示するらしい。現在は、私のような古参者は、IS単位を使って技術指導し、設計ツールの指導では、工学単位とISを併記することになる。ヨーロッパでISが標準化され、これを理解できないのは困るが、何でもかんでも行政主導が先行するのも、結構効率が悪い。

茨城大学工学部でエネルギー工学について講義しました

平成24年6月14日に茨城大学工学部で「エネルギー工学」の講義をしました。今年で3回目になります。昨年の東日本大震災の後、原子力発電の是非や自然エネルギーの展開について、毎日のように新聞に記事が載るようになりました。一般企業人が、その経験から得た知見、特に実際の設計という意味での考え方を中心に講義するように努めています。年一回の講義ですので、どうしても教訓めいた話をしてしまいます。私はエネルギー工学とは「エネルギーをマネッジメントする技術に携わる領域」と広くとらえています。つまり、エネルギーに関する仕事は何らかの形でエネルギー工学の範疇にはいります。重要なことは、エネルギー利用は、様々な分野の機器・装置を開発にも関連する横通しの技術であるということです。例年、新入生に対する講義ですので、同大学で熱工学の講師を務めた経験を踏まえて、エネルギー利用、熱利用を中心に講義しました。例年、100名近い参加者がいます。今年は、エネルギー資源について、自然エネルギーや石油代替エネルギー、あるいはメタンハイドレートやオイルシェール、シェールガスなどの新資源の展開に興味を持っている学生が多くいました。講義が終わってからもメタンハイドレートの実用化はいつごろからかなどの質問が多く、学生も社会の動向をよく調査して興味を持っていることが良くわかりました。私の講義は、新入生対象ですので、エネルギー利用技術に関しても、基本的に数式に依らない説明を心がけています。例えば、熱力学第一法則でいうエネルギー保存則はその総量は変わらないこと、第二法則はエネルギーの移動方向は決まっていること、そして其々からエンタルピとエントロピが出てきて、エネルギーの量や質のことと理解すれば判り易いなどと言います。実際の機器設計で公式をどう使えばよいか知らない人も多く、意味を理解せずに公式をそのまま使う人も多いので、基本を理解していれば、どのような複雑な公式も簡単に理解できることを実例を示して、説明しました。きちんとした考えをもって設計すれば、考え違いのミスもフィードバックしやすいし、過ちを繰り返さないということです。日本のエネルギー事情については、偏った思い込みで混乱させられないよう、地球上のエネルギーを有効に、また枯渇することのない自然エネルギーとバランスよく考えて、豊かな社会を実現するには、何をどうすべきか、なぜそうするのかを問いかけて社会に貢献する努力をしてくれれば十分と思います。

我が家できれいな花が咲きました。 自分の存在を主張するような赤い花です。

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